子会社形式による米国進出に係る課税関係についての概要
日本企業が米国進出するに際して、日本の親法人の子会社として現地法人を設立するケースも多いと思われます。その際に、当初の事業資金の調達手段として親会社社から株主ローンまたは出資を受けることが通常考えられます。この場合、日本の親会社は、ローンの利子や配当を米国子会社から受領することになります。
この場合、米国の子会社がアクティブな事業を行う会社である場合、通常、検討すべき税務上の論点としては、親会社が受け取る利子及び配当の日本の税務上の取り扱い、米国子会社が支払う利子及び配当に関する源泉税の取り扱いや米国子会社が支払う利子の損金算入制限となると考えられますので今回はこれらの論点について整理します。
日本親会社が米国子会社から受け取る配当(日本の税務)
日本の親会社が米国の子会社から受ける配当については、一般に外国子会社配当益金不算入制度の適用を受けることが可能です。
外国子会社配当益金不算入制度とは、外国の子会社の株式の25%以上を一定期間保有するなど一定の要件を満たした外国子会社から受け取る一定の剰余金の配当等の95%相当を、法人税法上の益金に算入しないことができる制度です。
本制度によって、外国子会社から受けた配当について日本において課税をしないことで、二重課税の排除と外国子会社の留保金を日本に還流させることを実現できるようにしています。
米国子会社から受け取る利子(日本の税務)
米国の子会社から受け取る利子に関しては日本の親会社の益金の額に算入されます。
ただし、米国の子会社の株式の50%以上を保有するなど米国の子会社が日本の移転価格税制上の国外関連者に該当する場合は移転価格税制の適用の対象となるためその利子の水準が第三社価格等に照らして低い場合には、追加的に益金の額に算入する金額が発生する可能性があります。
利子に対する源泉税(米国の税務)
米国の子会社が日本の親会社に利子を支払う場合の原則的な源泉税率は30%です。
ただし、日米相続税条約の適用を受けることができる場合には当該利子にかかる源泉税は一定の手続きの下、免除されます。
配当に対する源泉税(米国の税務)
米国の子会社が日本の親会社に配当を支払う場合の原則的な源泉税率は30%です。
ただし、日米相続税条約の適用を受けることができる場合には当該配当にかかる源泉税は一定の手続きの下、その株式の保有割合等に応じて0%~10%に減免されます。
利子の損金算入制限(米国の税務)
米国の子会社が日本の親会社に支払う利子に関しては、米国において移転価格税制、過少資本税制や過大支払利子の適用対象となります。
従って、これらの税制に係るタックス・プランニングは米国への進出時に十分に行われる必要があります。
終わりに
以上、日本企業が米国に進出する際の、重要なトピックについて整理しましたがこれらの税制に関しては日米双方での検討が必要なこと、内容に関しても非常に複雑で多岐にわたるものであることから日米の税務に精通した、税理士や公認会計士への事前の相談をすることが重要になってくると考えられます。
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